 2256 漆黒から始まる。
 遠山静雄氏は日本における舞台照明のフロンティアであるが、一度だけその舞台に接したことがある。東横劇場で催された現代舞踊の会、折田克子さんの静謐かつ鮮烈なステージの舞台照明を担当された。1974年ごろで80歳を越えていたと思うが、漆黒の背景から立ち上がる光彩の透明度に圧倒された。遠山氏の感性と生き方がリファレンスモデルとなった。その後舞台デザインの道を断念してグラフィック関連の道を進み、あの時の貴重な記憶も埋もれかかったが、商業写真を手掛けるようになって事態が変わった。ライティングの手法に反映できると確信したのだ。
新進気鋭のオーディオプロダクツDVASのデビュー作品を撮影する機会を得た。くどい説明はなしでご覧いただければ幸いである。あの時の遠山氏の年齢まで少しあるから希望を持ってもいいかも知れない。 |