 2237 改訂 スピーカーケーブルについて
 1 自作のスピーカーシステム"AirEdge's One"は現在4WAYのバイアンプ駆動にまで拡張している。現状でも想像以上にまとまった音を出していると思うが、まだ改善の余地はあると踏んでいる。時としてウーファー領域とミッドレンジ以降において出音の違いを感じることがある。フルレンジ的一体感の実現と共に高域までのリニアな質感を求めると、現状のバリアはどこにあるのか? さまざまな阻害原因を探りながら、スピーカーケーブルの統一はひとつの解決策ではないかと考えていた。自作スピーカーシステムの良いところは、アンプからユニットまでの全配線を統一できることで、以前ベルデンの安価な白黒ケーブルで長さまできっちり揃えて試したことがあるが、一体感は実現できるももの潤いに欠ける質感に納得がいかなかった。現在はシルバーコーティングのQEDをアンプ〜LCネットワークに使い、LCネットワーク〜スピーカーユニットは銅撚り線のキャブタイヤを各種案配してなんとか凌いでいる状況。統一という意味では、FURUTECHのFS-15Sという1.5mm径銅単線が最有力候補だった時期がある。しかしこれで全帯域を揃えると何かしら固有の癖が乗りそうに思え躊躇しているうちにディスコンになってしまった。
2 次の一手は純銀単線だ。20年も以前の話だが、イルンゴオーディオのK氏と親しかったとき、電源から信号までALL純銀単線を用いて、わが家のシステムでデモンストレーションしてもらった。それまで抱いていた銀線に対する偏見が見事に打ち砕かれた。ストレスのない圧倒的な力感、立ち上がりから余韻までのエンベロープの美しさなど、わが家の装置がここまで鳴るかというレベルで、音楽の核に近づいているという実感があった。隣室にいた妻が、鮫島由美子の歌唱に驚いて飛んで来たくらい(笑)。とはいえこのイルンゴも含めメーカー製品で揃えると破産しそうな費用規模であり、次の一手には進めないでいた。 そんな折、純銀単線に特化したケーブル工房 "PREMIER CABLE" の存在を知った。テフロンチューブに単線を挿入しただけのシンプルな仕様で線径1.0mm。スピーカーケーブルは1mmが最善であるとの主張だったが、電気的容量は問題ないとしても、感覚的にやや細いじゃないかと保留にしていたら、昨年になって1.5mm径がラインナップされた。ノンシールドで防振対策なしは苦労しそうだが、過剰な処理も別の意味で問題なので、これを使いこなすのはオーディオ趣味としてはアリかなと思ったわけだ。という経緯で、昨年末にケーブル長、端末処理方法などをカスタム仕様として発注し、先日完成品が届いたのだった。ノンシールドは問題ないと考えているが、振動対策にどういう対処が可能か思案中。ホット・コールド別単線なのでケーブルの枝振りも重要で、装着までの道は長いがLCネットワークを含めすべてが純銀単線仕様になる。
3 とりあえず、ネットワークからユニットまでを結線した。一気に全取っ替えを考えていたのだが、個別の変化量を知っておく必要があると思い考え直した。要はスピーカーシステムの内部配線だけを入れ換えた状態。アンプの出力は減衰させないまま、ユニットの端子にL型パッドを仕込んでいる。新しいケーブルの端子はすべて圧着処理でハンダを追放している。ウーファー本体の振動を緩和する意味では、端子部分だけ錦糸線を挿入する方法があるが、当初はダイレクト結線で試したが古いJBLのスプリング端子では点接触になってしまい力感に欠けるので前途の方法に戻った。この状態で、高域方向のニュアンスが従来と大きく異なった。響きは多めに感じるが塊にならず分離しているのでコアの音がしっかり出ている。固有の癖は感じず、6C33B OTLアンプを使っていたときの透明で艶やかな立ち方に近い印象をもった。
4 数日後にアンプからユニットまでを入れ換えALL純銀単線になった。従来の帯域レベル設定のままで試聴しているが感触はいい。ややローコントラストながら銀線の癖や細さは感じられないので今後のエージングと使いこなしで大化けする予感。そこでツイター域をやや上げてアグレッシブ方向へ変更。かなり鮮明な立ち方になる。微細な描写は8Kのノンシャープネス画像を彷彿とさせる。アンプからユニットまでの全配線を統一したことで、4WAYの一体感は確実に上がっていると感じた。JBLとALTECの混成部隊がこのような音響球体を表現している不思議。分離感・先鋭感を失わずにフルレンジテイストを具現化する目標に近づいている。願わくばもう少し低重心にしたいところで、リアルタイム・アナライザーで測定しつつ31バンドのスライダーで調整した。今回はパワーアンプのレベル調整も再検討しながらトータルのバランスを取り直した。予想に反してアナログディスクが驚愕の再生で、濃密微細なニュアンスと立ち昇る色香に降参! CDでこのクオリティを出すという当面の目標も得たが、だめ押しの一手でスーパーウーファーにも純銀単線を発注している。
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