978 ちあきなおみのリアルヴォイスから・・・
 マイクを持ったまま客席に降りてきたと思ったら、な、なんとわたくしの前で立ち止まった。思いのほか小柄でしかも美形ではないか。10年くらい前に西武劇場の客席で見た小川真由美に似ている(笑) 「今日は、お越し頂きありがとうございます。」なんてことを言いつつ、そこで唄い始めたのだ。わたくしから75cmの距離である。
1991年、高田馬場のグローブ座でのことだ。演目は「ソング・デイズ」戦後の焼け跡闇市を舞台にしたミュージカルで主演がちあきなおみなのだ。前年の「LADY DAY」は悔しいことにチケットが取れず、今回は満を持して最前列を確保した。
コロムビア時代のちあきなおみはそれほど好きな歌い手ではなかったが、85年にビクターから出たアルバム「港のみえる丘」、その3年後のテイチク盤「伝わりますか」で俄然ファンになってしまったのだ。
で、話をグローブ座に戻すと、PA装置があるとはいえ、目前だから地声が良く聴き取れる。PAよりわずかに先に到達する彼女の肉声だけに注視したのはいうまでもない。骨っぽく乾いた音だ。レコードで聴いている肉質感とは違う。しかし、驚いたのは音質的なバランスではなく、歌の巧さというか微細なコントロールの凄さ。尋常ではないと思った。これが聴き取れなくてなにがハイファイだ、とも思った。
当時のメインスピーカーはロジャースLS3/5Aで、クレルKSA50でドライブするその音に不満はなかった筈なのに、声の微細な襞の表情とリアルな実体感を求めたくなってしまう。翌年のパワーアンプの自作に始まり、メインスピーカーとプリアンプの研究、と怒濤のオーディオ街道まっしぐら・・・
あれから17年。 そろそろ機械いじりの幕引きをしたくなっている自分がいる。♪なーんちゃって。
|