797 絶品!高尾懺悔
 さきにご案内した、紀尾井ホールの演奏会。 ぼくは創作邦楽ってものが、さっぱり理解できないので、アタマの創作二曲はほぼ微睡みのなかにいた。っていうか聴いていてなにか恥ずかしくなるのよね(笑) 目的は最後の「高尾懺悔」だけ。
この曲は、数多くの長唄のなかでもいちばん好きな作品だ。 若かりしころ、今回のリサイタルの師匠に唄と三味線を習っていて、24歳のとき止める決心をしたのだが、最後にこちらからリクエストして教えてもらったのが、この曲だった。
冒頭の三味線の前弾きは、聴かせどころなので、思い入れたっぷりに陰々滅々っぽくなるところを、今回、至極アッサリ入ってきた。それも二挺のユニゾンで。 立唄の宮田哲男氏も重くならずに、でも軽いわけじゃなく入魂の唄いっぷり。年老いても色気がある。このコンビの演奏は数え切れないくらい聴いているが、今回は最高の成果と思った。 全曲三下がりでケレンのない楽曲なので、テンポ配分を誤ると間延びしてしまうが、さすが政太郎氏、音のドラマをきっちり作った。
この曲は戦後すぐに録音された、芳村伊四郎(のちの伊十郎)と稀音家六治(のちの山田抄太郎)の演奏が有名なのだが、遊女高尾の亡霊の儚さの表現では、今日ここで聴いた演奏が勝っていると確信した。 それにしても2006年の日本で、形骸化してしまったと思われる古典三味線音楽が、このような深い音楽表現をしたことに驚かずにはいられない。 |