804 誰も書かないデジタルの本当の意味
 いまどきは、デジタルだから波形がギザギザ、なーんて考えてる人は少ないと思うけれど、フィルタリングの意味を正しく捉えるのは容易ではない。かく言うわたくしもほとんど理解できていなかった時代があって、始末の悪いことに、その当時、かのMJ誌"サイドワインダー"欄に投稿した私的デジタル論が、没になったと思いきや、なんと送付から3年も経って突然掲載されたんだよね、これが・・・。 掲載誌が送られてきたわけだけど、その理由が分からなかった。数日して該当記事を発見したときの恥ずかしさといったら・・・事前に連絡してくるとか出来んものかねえ。 じつを言うとその投稿から何か月か過ぎたところで、もういちど書き直そうと音声と画像の符号化の意味を最初から洗い直してみたのだ。あのページは専門家の審査(ってほどではないのかもしれないが)はあるはずだから、没になったであろう問題部分を正したいという反省があったわけだ。なのに・・・(笑)
第一章 フィルタ、過去と未来をつなぐために
音と絵ではデジタルの記録・再生の手法が異なる。音の場合は再生のキャンバスが元音場と同次元なのに対して、画像は次元がひとつ減ったりするわけだから当然かもしれない。しかしながら、対象を区切ってそれらの断片*を数値化するという意味では同じ作業をしている。音であればそれは時間であり、画像ならエリアということになる。それらの時間やエリアをすくい取るマス目がサンプリングであり、数値化はすなわちビット(量子化)である。 *「断片」ということば、デジタルの実体をみごとに表している。
その際の重要なプロセスがフィルタリングだ。現実世界をアナログと捉えるならば、アナログ現世界→デジタル記録・伝送→アナログ再現世界というフローになるが、デジタルデータの点描的数値列に、途切れのない連続情報を忍ばせる手法がフィルタリングである。A/D(アナログ→デジタル)変換でのプレフィルタ、D/A(デジタル→アナログ)変換でのポストフィルタが二つがそれにあたる。
デジタルプロセスの専門書を紐解くと、A/D変換で必ず触れられるのが「プレフィルタ」の必要性だ。「シャノンの定理から導かれる高域記録限界はサンプリング値の1/2f以下であり、そのためには適切なハイ・カット・フィルタ(LPF)を通す必要がある。」と書いてある。当初、ぼくにはこれの意味するところが解らなかった。折り返しノイズの弊害を示されても、D/A変換後のポスト・フィルタがあれば問題ないではないか、などと迂闊にも思ったりしていたのだ。
ところがこのLPFでもっとも重要な意味は、サンプリングをリアルな点と点で結ぶのではなく、測定点をある幅をもった平均化された情報として取り込むことだと、あるとき気がついた。ここで言う「幅」は画像ならエリア方向、オーディオなら時間軸方向ということになる。この幅に相当するデータは、該当ポイントとそれに連なる周辺を暈かすことによって得られる。そしてこの平均化されたデータこそが、連続波を蘇えらせる補間の素材となるのだ。
ここで、画像はともかく音のようにリアルタイムで変化する事象に未来を織り込めるかという疑問が当然でてくるだろう。ぼくのように非理科系の人間は、これを上手く説明できない(笑) あえて言えば、波は時間というキャンバスの上にしか存在しないという事実だ。・・・・・1/44100秒のなかに過去と未来を組み入れた16bitの情報列。これがオーディオCDの実体ではないだろうか。
以下は「新宿事象解析研究所」のコンテンツのひとつ「デジタル記録とアナログ復元を考える」から該当部分の解説図版を再編集したものである。これは2001年ごろにアップしたもので、さきのMJ投稿の後のことである。音声処理を静止画像で伝えるのは困難で伝えにくいが、数年経過したいまでも、これ以上の手法を思いつかない。数式では直感的な理解が得られない自分自身のために考えた手法でもある。
以下、不定期でアップする予定です。 第二章 符号化とは世界を値踏みすること 第三章 フォーマットの逆襲、器の大きさと人間の感性 |