898 Adobe RGB モニター導入記 その1
 1984年にMS-DOSのPCを導入したとき、モニター画面の色はその中で完結していた。256色のなかから任意の16色を表示するのが精一杯だったし、当時は外部からカラー原稿を入力する手だてもごく限られていた。デジタルカメラが登場するのはそのずっと後で、スキャナーの主流はモノクログレースケール、カラーはというとハガキ大の読み取りしかできないEPSON GT-1000の登場に狂喜乱舞したくらいの時代だった。
その4年後に登場したMac IIとAldas社のFreeHand(PostScript)によって、はじめてC/M/Y/Kという印刷インキのシミュレーションが出来るようになる。現在でも生きながらえている24bit(8bit×3)規格のビデオカードも登場し、フルカラー制作環境が整ったわけだ。当時わが事務所では年間売り上げの半分に相当する資金を投入してMac DTPを始めたのだが、FreeHand ver2やIllustrator ver1における青色「C100%」の表示に驚いた。本物と似ても似つかない軽い色しか出ない!深くすると彩度も下がってしまう。緑色「C100%+Y100%」はさらに悲惨だった。鮮やかにするには明度を上げるしかないRGBの宿命というものを実感した瞬間だ。しかし世の中には濃くて鮮やかという色はいくらでも存在するのだ。
ただ、不思議なことに仕事でそれほどの支障は出なかった(笑)。モニターというものは他の世界でもそうだが、基準をわきまえて使うスケールだから、サバ読みというか換算が出来れば大きな問題は生じない。もとより印刷における減算混合と蛍光体(発光体)の加算混合は別世界であって同じになることはあり得ない。それは赤と緑の境界のザワメキ方を見れば一目瞭然で、しかしここを問題にした解説をあまり見ないのは不思議だ。
それからほぼ10年後の1998年に発表されたAdobe RGBカラー空間は、プロセスインキ(CMYK)が表現する色域を確保した拡張RGBだ。これは「モニター画面の中で完結する世界」から実世界近似へ解放する手だてになるのか大いに期待した。間もなく登場したAdobe RGB対応ディスプレイは三菱のCRTだったが売価70万円で、景気低迷の折りちょっと手が出なかった。で、待つことさらに数年、コスト対効果でようやく導入に踏み切ったのはNANAO ColorEdge CG241W BKである。Adobe RGB領域96%表示というスペックはやや気に入らないが(笑)価格を考えれば・・・まあAdobe RGBのスケールに早く慣れる必要があるから仕方がない。
この機種はオプションで自動キャリブレーターが装備されていて簡単に色補正ができるという触れ込みなのだが、あえて目視調整にトライしている。基準がカラダに染みこんでいるから合わせられると思うが、多岐に渡るパラメータをどこから手をつけるかというのは結構難しい。ハードウエア内でできる限り追い込むこと、ソフトウエア段階は最後にほんの少しだけ・・・オーディオの調整とまったく同じだ(笑)
写真はハードウエアの調整にトライしているシーン。手前のカラーチャートは画面上のデータをそのまま印刷したもので、色味と階調性(とくに中央部50%付近の濃度)を比較する。ウエブ上ではsRGBに変換せざるを得ないので、真価が伝わらないのがもどかしい(笑) |