 2186 モノラル&ファンタム
 コンサートホールやライブハウスの臨場感をオーディオに求めることもあるが、そうではなく、ひっそりと素の音楽に向き合いたいときがある。素の音楽の定義は難しいが、たったひとりの聴き手が表現者と対峙する音楽とでも言おうか。ステージの配置やら奥行きの深さ、天井の高さなども邪魔になる(笑) 大人数の演奏者や並んで座る観客たちは、物理的な制約からの仕組みでしかないと思わせる音楽は少なくない。
そこでモノラル再生である。古い音源以外はステレオ録音であるから、なんらかの処理を行ってモノラルにまとめなければならないが、これが難しい。アンプのモードセレクターでまとめると音楽のエッジが微妙に鈍るような気がする。アナログディスクであればステレオの音溝をトレースできるモノラル専用カートリッジで、片CHの出力を2CHに振り分けて両スピーカーから再生する。モノラル再生の達人たちはスピーカーもモノラル1本を主張するが、左右スピーカーの中央にファンタムで浮かぶ音楽がわたしは好きだ。
昨晩は、この構成で内藤やす子の「サタデー・クイーン」から”F#M"を聴いた。むせび泣くE・ギターと彼女自身が渾然一体となって暗闇に浮かび上がった。 |