963 もうそこに私はいません(大風呂敷モード)
 わが家のオーディオ機器はプリアンプとスピーカーシステムが自作品。フロントエンドにあたるCDPとアナログディスクプレイヤーが既製品という構成で、それはここ10年にわたり不動だ。フロントエンドの機器類はまず作れないし、パワーアンプも自作でより良い結果を出せる自信がないというのがそうなった理由でもある。
電圧増幅段は無帰還の真空管が最良という思いがあって、だから慣れないながらも自家設計・製作を選んだ。もともとへそ曲がりな性格ゆえ、キットはおろか製作記事のコピーも避けた。苦難の道ではあったが、なんとか実用に漕ぎ着けたのはいまから10年前。その後はスピーカーシステムとの二人三脚的改良を繰り返したつもりだったのだが、判断が甘かった・・・。
発端は、去年のエンクロージャー耐震補強工事が想定していた成果に届かなかったことで、まずはその工事を疑ったわけだが、深い追求が出来ないまま、先月のCHORD軍団の襲撃で、想像以上にスピーカーのポテンシャルを見せつけられたこと。これがとどめになった。
そのときの分析から、プリアンプ送り出しのトランスをスルーした話はこの日記に書いたとおりで、その後もシステムの表現力は徐々に変化している。このGWの後半は湿度が少なかったせいもあるのか、強靱な放射力にヘッドルームの気配さえ伺えず、さらに女性ボーカルのアンニュイな色香やストリングスの瑞々しいざわめき感を伝える、ほとんど無敵のサウンドリプロデューサーに大化けしてしまった。先の「ナローレンジ宣言」はいったい何処へ行ってしまったのか(笑)
ここまで読んで、呆れ果ててページを閉じた方も多いと思うが、いったい、なにが貢献してこうまで言わしめるのか、ここは冷静に他人ごとのように分析してみた。
1:3極管無帰還1段のシンプルプリアンプをきわめて小レベルの入力で動作させていること。グリッド電位2.7Vに対して、CDのマックスレベルで0.5V以下! S/N的見地からは拙い配分ではあるが、リニアリティは最高で、さらに歪率特性も大幅に改善されているはず。
2:もともとフォノイコアンプなので前2段分の消費電流がブリーダーとして安定化に貢献している。片CHで50mAの消費電流のうち7mAだけで稼働しているというわけで、これはどんなピークが来てもヘタらないことを意味している。
3:この電圧増幅段はトランス10KΩ負荷を前提にカップリングコンデンサの定数を決めていたが、スルーしたためパワーアンプの47KΩが負荷になり、低域限界が大幅に拡張した。
というわけで、ラインアンプとしては例のないリニアリティと広帯域特性をもたらした模様。問題はS/Nだけ・・・
スピーカー"Air's Edge One point One"の最大の利点は、じつは低音ホーンとかネットワークレスではなく、ユニットを取り付けているバッフルを100Kgの全重量で前後から押さえつけていることではないかと、最近気が付いた。まさに微動だにしない。さらにウーファーの位置が前後中心にありながら、いちばん低い所に位置する。こういうエンクロージャーは古今東西例がないと思うが、浅薄な当方の知識ゆえ知らないだけかも。 これらは動作でブレないという意味でプリアンプの電源状況と似ている。
結論として、プリアンプのリニアリティを初めとした基本性能が向上して、スピーカーの本来のポテンシャルをようやく活かせるようになったということではないだろうか。プリの支配力は想像以上なのだ。
現状のサウンドを知っているのは。家族と愛犬二匹を除くとご近所のりゅりゅ氏だけ。いままでお聴きいただいた多くのみなさま。もうあのときの音は忘れてください。もうそこに私はいませんので(笑) |