845 Air's Edge Oneストーリー 前
 12年前にALTECのユニットを使ったスピーカーシステムを計画したとき、頭にあったのは604デュプレックスである。これはかのジェームス・B・ランシング氏が開発した515ウーファーと802ドライバーを合体させたものだ。1945年のことである。
この初代機は残念ながら聴いたことはないが、クロスオーバーを1KHzに下げた604Bをエルタスの店頭で聴いたことがある。床に転がした裸のままのユニットだったが、女性ヴォーカルの濃密な色香にコロッと逝ってしまった。これで石川さゆりの「おんな港町」を聴きたいと心底思ったものだ。(註:この曲は八代亜紀のカバーであるが、さゆりちゃんの方が数段勝っているように思える。)
ところがこの604B、あまり綺麗とはいえないコンディションにも関わらず、値付けが高い! ジュピターオーディオにはキズひとつない新同品?があったがさらに高価でペアで50万くらいしていた。貧乏性なわたくしは、それだったら515と802を買ったほうが安いじゃんと迂闊にも思ったものだ。
というわけで、何軒かのヴィンテージショップ巡りをして、たいていは店主の唯我独尊的キャラに辟易としたわけだが(笑)515Bと802D+511ホーンを購入した。ご存じのようにALTECの正規組み合わせには、このセットは存在しない。515は288ドライバーと相場が決まっているし、802は803ウーファーもしくは416という具合だ。しかし、あたまの中は604だから一向に気にはしなかった。
その後のエンクロージャー製作の模様は雑誌MJにも書いたが、要はJBLパラゴンの作法を一部借りて、604の拡大解釈版を意図したわけだ。ちなみに515Bと802Dの組み合わせは1957年に発表された604Dデュプレックスそのものということになる。
当初目指したのは、ナローながら機敏でタイトな音だった。パワーアンプは自作の6V6ドライブのWE350Aシングルだったから、大音量域は想定外。ひたすらローレベルの階調を重視していた。(つづく) |