928 影の色あい、あるいはターニングポイント その1
 この一週間、ひたすら撮影に没頭していた。そして広告写真を撮るということはデザイン行為そのものとの感を強く持った。日常のスナップとの違いはそこにある。アングル、ライティング、ページネーション、フォトグラファーとグラフィックデザイナーの境目はない。
作業工程のデジタル化は、従来の職域を次々とご破算にしてきたが、究極のフローはどんなものか? ひとりの人間がすべてを司るには無理があるだろうから、お互いの領域を浸食しつつ強固なネットワークを組み上げることかもしれない。
わたくしの場合はというと、不幸なことにひとりでやる癖が染み込んでしまったから、分野を限定すればなんとかなるだろうと決断した。デザイン事務所の2/3のスペースを撮影スタジオに割いた。ジャンルはもちろんオーディオだ。
製品が持ち込まれるまで、すべては白紙である。ひたすら対象と向き合う。物のなにを訴えるべきか考えながらアングルを探る。コピーライティングもそのなかで浮かび上がるのを待つ。中段左のアンプは重すぎて床置きで済ませたが、尋常ではない存在感を示していたから、月明かりのような幽玄なライティングが欲しい。(つづく)
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