初めてよそ様のお宅で聴かせてもらったオーディオ装置のスピーカーはGOODMANS AXIOM80だった。ガラードのA型オートターンテーブルに装着されたカートリッジはシュアーM55、アンプはフィッシャーのセパレートタイプ。2連タイプの純正エンクロージャーに装着されたAXIOM80が空間に放つ目映い光彩はいまでも鮮明に覚えている。音に色*があるというのを知ったのはその時だ。(*音色のことではなく色価のようなもの。音色を描き分けても色を感じない再生音はある。) 1965年の府中の片田舎にそんな装置があったというのは奇跡みたいだけれど、じつは裏がある(笑)。当時、東府中には米軍の極東司令部があって、高級将校のハウスが小金井街道沿いに点在していた。広い芝生と白亜の2階建て住居、リビングルームにはグランドピアノもあったにちがいない。そして高級オーディオセット。彼らは1960年代初頭から本国に帰還し始めたので、それらの家財を東府中で処分したという。 当時、わが家にはステレオ装置なんか当然なくて、ビクターの免税プレイヤー(6460円と決まっていた)に左CHはテレビ、右CHは電蓄をばらしたアンプスピーカーに接続した"取りあえずステレオ"でお茶を濁していたが、なぜかオーディオの知識だけはあって、そのお宅のリスニングルームへ入った瞬間、ほとんどの機械の名前は分かった(笑) 写真:八王子散田町「野鴨の家」にて |