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photo and Text: machinist

039 ちあきなおみ 演じる歌
たとえば「矢切りの渡し」。永久の旅に漕ぎ出す男と女を、明確に唄い分ける。「クサイ」と言われればそうかもしれない。でもその作られた世界に聴き入ってしまう巧みさ。ほとんど浄瑠璃の世界だ。なおみさんは、いつも「その世界」の外側にいるんだね。どろどろの情念を唄っても、なにかクールな気配。男唄が上手いのはそのせい。テイチク時代の「男の郷愁」というアルバムはとくに好きだ。なかで「男の友情」と「居酒屋」は絶品ではないかなあ。
そして「朝日のあたる家」。戦後の焼け跡を舞台にした「ソング・デイズ」で唄ったし、去年リリースされたCD「ヴァーチャルコンサート」にも収録されている。極めつけはTBS-TVでオンエアーされた「すばらしき仲間2」でのスタジオライブ。これはもう壮絶としか言いようがない。仕草と歌唱が融合してパワーが8倍くらいになっている。まさに「演じる歌」の極北。
なかば引退してしまった、ちあきさんですが、もういちど生の声を聴きたい。演じない「素」の、なおみさんの内面の、こころの歌を・・・。
(PENTAX*istD FA Macro 50mm F2.8)
2004/04/14



038 アナハイムの「トスカニーニ」
憧憬でしかなかった、輸入オーディオ機器で武装したジャズ喫茶のリニューアルOPEN。吉祥寺FUNKEY、1970年春のことだった。2階に置かれたALTECが聴かせるニーナ・シモンにこころを奪われた。ダイレクトな実体感と色彩感。音は輪郭ではなくアーティストの実体を示さなければいけないと教えられた。そのA7-500システムに使われていたホーンがこの511B。
四半世紀後に1年がかりで自作したスピーカシステムはこのホーンなしには成立しない。わずか1インチ径のスロートで500Hzをカバーする。古いALTECブランドに使われていた指揮者のイラストを組み入れたマークを、このシステムのために新たにデザインした。描かれている指揮者はトスカニーニなんだそうな。
(PENTAX*istD FA ZOOM 28-105mm F4.0-5.6IF)
2004/04/13



037 くるまのカタチ
「フォードは丸いライトが横に並んでいるだろ。シボレーは羽根が、ほらこんなふうに・・・」アメ車のテール識別法、近所の3歳年上のくるま好きに教えられた。生まれ育った府中は駐留軍の司令部があったので、高級将校の乗用車が引っ切りなしに目の前を通っていた。
その数十年後、同じ場所から見た風景。あのころ想像していた未来が「今」なんだと気がついた。未来図に描かれていた「くるま」がここにある。四隅にゴムタイヤが着いたままだとは思っていなかったけれど。
(PENTAX*istD FA ZOOM 28-105mm F4.0-5.6IF)
2004/04/12



036 伝統は精神を未来へ繋ぐ系である II
長唄でいえば、発生初期から中期以前、宝暦・明和・安永あたりがいちばん力のあった時代だと思う。「京鹿子娘道成寺」や「鷺娘」「二人椀久」などの、いまに伝わる名曲はこの頃、いまから250年も前に作られた。
しかし未来永劫に続くポテンシャルはあり得ない。スタイルの確立というのは両刃の剣でもある。真のクリエーターはジャンルを考えて始める訳じゃないから、最初は混沌として猥雑なものだ。それがある段階で洗練され定型化・類型化し、やがて朽ち果てる。現代物理学でいうところの、構造が残ってエネルギーがなくなりかけた状態。
生で聴くことのできる三味線音楽の大半は、伝統の周辺に散らばった抜け殻のようにしか思えない。残念ながら・・・。伝承形態が幾年の重みで破綻を来したのか。かたちを受け継いでいくことの疲弊は、ある意味で仕方のないことではあるけれど、そのかたちは「魂」の外形を示していたはずだ。だからこそ、かたちのなかに潜む「精神」を受け継いだ三味線音楽を、いま聴きたいと願っている。三味線は他の楽器に代えがたい表現力を持っているのだから。
(PENTAX*istD smcA 50mm F1.4)
2004/04/09






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↑フルカラー(RGB各8bit)の精密グレースケールの両端を表示しています。すべてを正確に画き分けるモニターは存在しないと思います。
しかしながら「14」や「242」が識別できない場合はモニターレベルで顕著な黒潰れや白飛びが発生しています。ガンマユーティリティなどを使ってモニター調整することをお奨めします。
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