2041 六代目 竹本織太夫 襲名披露公演
 摂州合邦辻(せっしゅうがっぽうがつじ)「合邦住家の段」国立劇場二月公演にて
久しぶりの国立劇場文楽鑑賞だった。前回が平成元年の竹本越路太夫引退興行なのだから、相当なものだ(笑) この演目は、上巻・下巻が各3段づつの構成で「合邦住家の段」は物語の最終章であるが、新・織太夫は、一夜の壮絶なドラマを鮮やかに濃密に演じ切っていた。エンターテイメントとしての義太夫の可能性も感じた。まだ40歳代だがデモーニッシュな声量を活かして、太夫の頂点に達する日が来るかもしれない。
とはいえ、今回ぜひ伝えたかったのは、その前段の切場「しんしんたる夜の道〜」を演じた、豊竹咲太夫と鶴沢清治のクオリティだ。老夫婦の葛藤、親子のもつれた情愛を静かに内面から炙り出す咲太夫の語り。名人四世鶴沢清六を彷彿とさせる明晰で襞のある清治の糸。両者が融合して発する音楽は至上のものと思え、個人的にはこれ以上の表現世界は、過去にもより短いであろう未来にも巡り会えないとさえ感じるものだった。
写真は、観劇日の僅か4日前に一席だけ空いていた7列26番から見た舞台。義太夫を感じるには最良の場所。 |