816 続・ウーファーケーブル
 モゴモゴの音と思いきや、悲観するほどでもなかった(笑)
中高域のケーブルはそのままなので、当然ながらバランスは崩れた。相対的なものと思うが高域がややキャンつく癖を感じた。なので昨年末に施したウーファーホーン出口のウレタンを撤去してみた。対策ではなく問題点を際だたせるためだ。結果、この低域用ケーブルを使うには高域用のそれをもっとキャラの少ないものに変更する必要がありそうと判断した。現行のオルトフォンSPK3100silvetには確かにそのような傾向がある。
・・・ところが、さまざまな音楽を流し続けていくうち、4時間目くらいからか、何かが変化し始めた。ウーファー用ケーブルが変わったからといって、低音だけを判断できる耳を持ち合わせていないから、全体的な印象になるが、2ウエイの乖離感がなくなっている。音像はたしかに太いが、茫漠としたものではなく、芯の太さであるところが救いだ。
クラウディオ・アラウの晩年のバッハをかけてみた。このPartitaのレコーディングのあと彼は88歳で亡くなっている。ミネラルをたっぷり含んだ地下水がこんこんとわき上がるような自然で生命力のある演奏だ。 "滋味あふれる"なんて安直に表現するのは間違いだと気づいたのは、抑制を効かせながら完璧にコントロールされたその左手の音によってだ。このCDは何十回となく聴いているのに思い至らなかった。もしや、このケーブルの工業用途の防振構造が寄与しているのか・・・
このALTECのオールドユニットを用いた自作システムは、近年になって対象音楽はかなりオールマイティになって来つつあったが、唯一納得できない部分はグランドピアノの低弦の粘り感だった。これをナローレンジの弊害と考え、じつは低域拡大の方策をめぐらしていた。高能率ウーファーに加える装置としてはアクティブウーファー以外の選択肢は少ないが、当初からその手法は考えていなかったので計画は難航した。解決策として負荷インピーダンスの落差で能率をかせぐ方法を考えた。ただ、着手するまえにケーブルに浮気してみようかという程度のノリだった。
というわけで、この極太ケーブルはめでたく本採用になり、ワイドレンジ計画はまた遠のいた。エージングと高域のマッチングが上手く行けば、ナローレンジのまま一段上のステージが待っているかもしれない。
写真:床に置かれているのがいままでウーファー用に使っていたオルトフォンSPK300 |