幻聴日記
Photo & Text: m_a_c_h_i_n_i_s_t 
幻聴日記最新版はこちらから 

060 代数と幾何、あるいは離散と連続。大橋力の世界観

「音と文明------音の環境学ことはじめ」(岩波書店刊)は、音の分野に限定されない広大な洞察力に圧倒される。著者の大橋氏は、情報や生体、環境を横断する学際的な研究者で、あの芸能山城組の主宰者山城祥二氏でもあるのは御存知のとおり。600ページの本文は、音楽制作の現場体験をはじめとして、知覚・意識の生体的論考から数学、物理、音楽の各テリトリーを縦横無人に駆けめぐる大橋ワールド。非言語←→言語、幾何(量)←→代数(数値)といったようなアナログ、デジタルの両翼から、記号化で失なわれるものの重要性をくり返し述べているのが興味深い。これは、お買い物ガイドのはるか先に位置するオーディオ評論でもある。
写真:工事中の都立新宿高校とDoCoMoアンテナビル(PENTAX*istD FA ZOOM 28-105mm F4.0-5.6IF)
2004/05/07


059 伝統音楽における低音問題を考える。

幼いときから西洋音楽に馴染んでいる現代日本人が、日本の伝統音楽にふれたとき「なんて甲高い音楽なんだ!」と感じるのは普通のセンスだと思う。歌舞伎で使われる音楽は長唄、豊後系浄瑠璃、義太夫が主なものだけど、大太鼓などがパルス的が使われることはあっても、西洋音楽にあるようなファンダメンタル(基底音)として仕組まれたものではない。日本が地震国であるということと関係ありそうだけど、「低音」は神の世界や自然界に属する「恐れおおい」ものなんだね。先の大太鼓の例でも、使われるシチュエーションは、天変地異であるとか、なにか巨大な存在の顕現であるとかだ。ちなみに写真の大国魂神社の巨大太鼓も、神輿を先導する悪魔払いがその役目だ。
(PENTAX*istD FA ZOOM 28-105mm F4.0-5.6IF)
2004/05/06


058 ウルトラソニックナチュラルドラゴン

名付けて「機竜」。かの長岡鉄男氏の「ネッシー」を強化・モデファイしたR邸のオリジナルスピーカシステムだ。エンクロージャーは鋼鉄の鎧をまとった@180Kgという壮絶なもので、支えるフロアは地球から生えたコンクリート。そのサウンドは、途方もない質量の粒子が光速でやって来るかのような衝撃に満ちている。なのにヴォーカルは人間のぬくもりさえ伝える表現のダイナミクス。
長岡氏を教祖と崇める、そっくりさんは多いけれど、R氏も製作者のA氏も、そうではなく求めるサウンドがこのカタチに結実したというところに惹かれる。流儀の異なる、わたくしにさえ魅力的なワン・アンド・オンリーの音世界。じつはちょいとばかり影響を受けはじめている。アブナイアブナイ・・・
(PENTAX*istD FA ZOOM 20-35mm F4AL)
2004/05/05


057 SHOPなのにHOUSEと呼ぶらしい。

今日のA新聞誌上で、あの丸谷才一氏が「平成という元号は良くない、一刻もはやく改元すべき」と述べている。なんでも「エ列音」は格が低く、侮蔑的で悪意のこもったマイナス方向の音なんだそうな。じっさい「平成」になって地震、不況、戦争と、いいことなんにもなかったしね。昭和の終わりごろ、わたくしは新元号に「極楽」ってのを提唱していたんだけど、誰も耳を貸してくれなかった。大世紀末と「極楽」は最高位のマッチングではなかったかと悔やまれる。
写真:GWでみんな遠出したのか、週末の夕方なのに閑散としていた16号線沿いのハウスストリート(PENTAX*istD FA ZOOM 28-105mm F4.0-5.6IF)
2004/05/04


056 福生 DEMODE DINER

国道16号をはさんで向こう側は横田基地。DEMODE DINERは50年代スタイルの食堂だ。ちょっとパンズの風味が落ちたような気がしたけど、たまたま運が悪かっただけかもしれない。塀の先のUSAを眺めながら食べるピュアアメリカンのハンバーガー、なかなかの風流というもんだ。もう1回、福生の写真を続けます。
(PENTAX*istD FA ZOOM 28-105mm F4.0-5.6IF)
2004/05/03


055 イラストレーター佐藤ヒロさんのこと その2

「ヒロさんが亡くなっていた・・・」考えたくもない予感が当たってしまった。新年を迎えてから何日も連絡がとれなくて不安が募っていた。彼のマンションの近くに住んでいる知人に、様子を見に行ってもらった結果がこれだった。年末に恒例のささやかな忘年会を曙橋のレストランでやったとき、かれは風邪をこじらせて元気がなかった。別れ際に「じゃーよいお年を、医者には行ってみるよ・・・」これが最後に聞いた言葉だった。
ヒロ氏の故郷、青森県黒石市の夏祭り「黒石よされ」をテーマにした一連のイラストの試作を見たときは、ほんと、こころ踊った。彼が好きだったマティスの「JAZZ」を彷彿とさせるダイナミックなタッチ、溢れるような色彩感。これを生かすデザイン作業の日々は、いま考えれば至福の時だったんだなあと、懐かしくそして切なく思い出している。
2004/05/02




INDEX HOME