<at sense> に三味線音楽のページをアップしました。

レコードで聴く七世芳村伊十郎の世界

長唄好きの2人が夜を徹して語り尽くす
CrossTalk 波多野唯仁+町田秀夫 公開中!

過去の名録音をご提供する準備をしています。
近年この分野に興味を持たれた方にとって、このページでご紹介している歴代の名演奏を耳にする機会が無きに等しいという現実を、大変残念に思っています。私事ですが今年になってから長唄、清元などの戦前のSP盤の収集を始めました。驚いたことに、これらのオリジナル音源は近年(といっても昭和40-50年代ですが)復刻LP化されたものと較べて、音楽のダイナミズムという観点ではるかに優れたものであったのです。
現在SP盤を最良の状態で再生すべく装置の更新を行っていますが、チューニングが終了した時点で、これらのデジタル化音源をサイト上にアップロードし、自由にダウンロードして聴取できる仕掛けを構築しようと考えております。今後のスケジュールはまだ確定していませんし、場合によっては1年ちかくかかってしまうかもしれませんが、どうかご期待くださいませ。プログラムの候補として九世芳村伊四郎の問答入り勧進帳、二人椀久をはじめ、戦前の吉住小三郎や五世延寿太夫などを考えております。
2002年10月21日 町田秀夫

配信フォーマット試験運用中→こちらで試聴できます。お聴きになられたご感想をお寄せください。


はじめに。

1970年ごろですが、トリオレコードが発売した、ある4トラックテープに大変おどろきました。それは、独特のワンポイント録音で著名なフランスのアンドレ・シャルラン氏が製作した、長唄「京鹿子娘道成寺」です。 演奏は立唄、松島庄三郎、立三味線が杵屋五三助(現、五三郎)というメンバーで(予定では当時の、というより戦後長唄界の最高峰、七世芳村伊十郎が立唄を努めることになっていたのですが、京都南座の公演中に脳卒中で倒れた…という経緯がありましたが、)演奏はなかなか素晴らしいもので、「山づくし」の段などは、庄三郎独特の無常感と五三助の緩みのないテンポ感で、非常にモダンな印象を受けたものです。
この3年ほど前、 生で聴いた義太夫に感銘を受けていたとはいえ、長唄のような舞踊を成り立ちとする三味線音楽には殆ど関心がなく、このテープこそが邦楽の世界へ迷い込むきっかけとなったのです。
驚いたと記したもう一つの理由は、サウンドのソノリティと空間感、そして演奏者相互の音量バランスです。一般に三味線音楽の特に長唄や清元、常磐津などのレコードの需要というのは踊り用であって、練習時はもちろん、発表会の舞台の袖のターンテーブルに載せる用途が主でしたから、それに相応しい録音がなされるのは致しかたありません。すなわち楽音以外の響きは極力おさえ、唄を明瞭に伝える・・・。三味線用のマイクロフォンにリボン型を使うのも必須で、プアな再生装置でも三味線の響きのエッセンスを伝えているように聴こえることから、演奏者側からの希望も多いと聞いています。
シャルラン氏の独特のダミーヘッド形式のマイクロフォンはコンデンサー型でしょうし、有為的な音量操作も不可能です。その結果は当然のようにナチュラルな、客席から舞台に臨むイメージが得られ、楽器の質感や位置関係も誇張感のないものでした。
この名録音、業界で話題になったかどうかは知りませんが、おそらく、特に演奏者には不評だったのでは・・・と想像します。というのはその後の純邦楽の録音に、あの成果がほとんど反映されていないからです。
ただ例外として、CBSソニーで半田健一氏が手がけられた、一連の義太夫シリーズと越後の瞽女(ごぜ)唄を挙げたいと思います。これらは自然な音場感とワンポイント方式では得にくいエネルギー感を両立させた見事な作品です。このCBSソニー盤に関しては後日触れることにします。
前置きが長くなりましたが、邦楽録音の歴史的考察(というほどのものでもないか)と共に、邦楽の発声法と楽器、とくに三味線の発音体としての構造にも触れたいと思います。
また七世芳村伊十郎の膨大な録音を年代順に考察するページを新たに設けましたので、どうかご覧ください。

CONTENTS

はじめに
 三味線音楽にはまった頃・・・
三味線の不思議「さわり」を考察する。
 和声ではなく音色の複雑化を求めた
昔の名人の本当の音を探りたい。
 長唄の品格、洒脱、洗練 吉住小三郎
 大薩摩の神髄 六世芳村伊十郎
 近代義太夫の到達点 豊竹山城少掾
レコードで聴く七世芳村伊十郎の世界
 伊四郎時代
 伊十郎モノラル時代
 伊十郎ステレオ時代
記憶に残る太棹の音色

 竹澤弥七の透明感
 鶴澤寛治の息の詰め
 野沢喜左衛門の色彩感
 鶴澤清介の颯爽
CrossTalk 波多野唯仁+町田秀夫 公開中!
 長唄好きの2人が夜を徹して語り尽くす

以下、構想中です。
●邦楽の発声法って本当にあるのか?
●勧進帳の不思議(楽曲の構造から)
●NHKの邦楽録音を考える。
●半田健一氏の邦楽録音
●伝統とは未来へ連なる「系」ではないのか?
 etc...

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