2002.03 ようやく更新しました。

Ver2.0で、なんとか耐えられる操作感になったように思えます。そこで当初から気になっていた2つの案件を検証します。 和文における「オプティカルカーニング」と詰め組を前提にした「文字組アキ量設定」の有効性についてです。

マニュアルやガイド本によると「オプティカルカーニング」は欧文処理に特化した解説がなされていて、和文組に関しての記述はほとんど見かけませんでした。Ver.1時代に約20.000字の和文テキストをこの方法で組んでみました。厖大な処理時間が必要で途方にくれたものですが、仕上がりの美しさは他に代えがたいものがありました。メトリクスで詰める場合は詰め値とトラキング値で調整するわけですが、かな文字と漢字の相互バランスがうまく取れないように思えます。
以下のpdfでお見せする例は、リュウミンR 13Qをジャスティファイで組んだ見本で、文字組アキ量設定を「なし」にしています。左段がオプティカルカーニング、右段がメトリクスですが、スペースを同等にするため表示のような微調整を行っています。なお、強い禁則を適用させていることと手動カーニングを行っていないことを申し添えておきます。

和文におけるオプティカルカーニングとメトリクスの比較PDF

この例では、オプティカルカーニングはトラッキングでやや開く設定しているため、かなと漢字のバランスがとれているのに対して、メトリクスはかな文字と欧文数字で密度感に差が出ているのが分かると思います。ただ両者に共通する難点として、和文と接する欧文数字のスペースがタイトすぎて綺麗ではありません。これはIllustratorによる文字組にも共通する問題ですが・・・。

次にオプティカルカーニングのままで、上記の問題点を克服すべく「文字組アキ量設定」を適用します。pdfの左段はInDesignのデフォルトとも言える「行末約物半角」テーブルを設定した例です。右段は横組み詰め組を念頭においたオリジナルのテーブルを設定したものです。

文字組アキ量設定テーブルの比較PDF

思うに、InDesignに既存している文字組アキ量テーブルは、均等配置のそれもタテ組を想定したものではないでしょうか?今回の例では、横+詰め組みにはまったく使えないものであるのがお判りいただけると思います。世の中に出回るInDsignくささがこんなもので代表されるとしたらとても残念なことです。右段に適用したカスタムテーブルは考え方として、ほとんどの項目を「0」に設定し、必要に応じてアキ値を加えるという手法です。例えば句点マルの前に微少なスペースを持たせるとか括弧の内部がタイトになりすぎないように、とか・・・。もちろんこのテーブルにしても未熟なものですので、必要に応じた微調整は避けられません。このPDFの例では、本文右段6行目の左端の括弧のみ手動カーニングを施しています。


2001.07

ここ3か月InDesignと苦闘いたしておりました。ようやく完成したデザインワークはこちらからご覧ください。作業や使用感から思うに、とても可能性のあるアプリケーションであることは確かですが、このver.1.0はプロの道具としては信頼性にマークが付くことは否めません。またG4を持ってしても快適なレスポンスとは程遠いのがさらなる難点です。次期バージョンが待たれますが、このような未完成な製品をリリースした責任はどうなるのでしょうか?


2001.03

このページでは、ようやくリリースされたAbobe InDesign 日本語版をデザイナーの立場から検証します。まだインストールしたばかりで、とても使いこなすというレベルではなく、とても内容が浅いのをお許しください。

InDesignは、英語版がアナウンスされたころから非常な関心を持っていました。というのもページレイアウトソフトの業界標準である「某Q」がとても使いにくく、つい「Illustrator」に頼ってしまうというか、テキストの微妙な調整に関してはIllustratorの方が勝っているとさえ考えています。欲をいえばルビ機能とTEXTスタイルシート、和欧混植用の合成フォントがあれば、あれでまっとうな仕事ができます。しかしながらアドビはIllustratorのバージョンアップでテキスト機能を強化することを意識的に避けてきたのか、Ver.5.5以降めぼしい進化はありませんでした。
InDesignがテキストを中核としたページワーク、Illustratorが図形関連という住み分けになっていくのでしょう。 デザイン作業上でもうひとつ「某Q」がネックなのは、貼付画像の表示が粗く画面上での作業に限界があること。InDesignでは表示画像のクオリティを何段階かにコントロールできます。

InDesign 日本語版の組版ポリシー

日本語化ローカライズが遅れた理由のひとつは、版面設計を従来のアプリケーションが採用している寸法で設定する「ページマージン方式」の他に、ベタ送りの文字数に依存する「レイアウトグリッド」を並立させたことではないでしょうか。このあたりDTP以前の、あえて言えば活字の伝統的日本語組版を尊重する姿勢で好感がもてます。 しかし縦組の文芸書はいざしらず、和欧混植よこ組みが主流の現代の組版事情の中で、均等送りの発想はある意味矛盾するわけで、InDesign 日本語版では約物などの送り(アキ)を制御するための多項目の「文字組アキ量設定テーブル」を設け、均等送りによる破綻を避けています。このテーブルの各項はそれぞれ優先度の設定ができる仕組みになっています。



上記の例はInDesignのレイアウトグリッドではなく、Illustrator上にベタ組グリッドを設定して、テキスト配置を厳密に監視するという私のところで日常実践している手法で、(InDesignの)レイアウトグリッドと同じ発想です。

もうひとつの版面設計法である「ページマージン方式」は、かな文字のカーニング情報を用いた日本語つめ組を、従来のDTPソフトと同様に行うのに適した方法です。
個人的なエピソードですが、私が文字組に興味を持ったきっかけは石井明朝体MM-OKLの横組みつめ印字の美しさ、いまから30年ちかく前のことです。MM-OKLのかなは文字により左右幅がかなり異なる、いわゆるプロポーショナルフォントなのです。本来この書体は縦組みベタ送りでリズム感の美しさをねらったものであり、横組みベタでは非常に間の抜けたパラパラした文字組になりますが、巧くつめ制御したときの「匂い立つような品格」は他に得難いものがありました。 欧文をルーツにするDTPになって、日本語も簡単につめ組が出来るようになりましたが、それにふさわしいフォントが無かったことは不幸なことでした。以下の例は商業印刷物で一般的に行われていたMM-OKLのつめ印字の例で、1980年ころの作品です。



DTPでつめ組の環境が整いつつあるのにもうひとつ残念なのは、写植末期の時代、文字の仮想ボディぎりぎりに設計されたフォントが流行したことです。写研「ゴナ」(ナールを源流とする)、モリサワ「ツディ」etc... これらはDTPの書体設計にも影響を与えましたが、このようなフォントはつめても美しさに貢献しません。
話が逸れて恐縮ですが、モリサワはなぜ「ツディ」でなく「新ゴ」といったゴナの亜流を登場させたのでしょうか?「ツディ」はそれなりにオリジナリティのある好きな書体でしたが・・・。

InDesign 日本語版で美しいつめ組が出来るのか?

均等送りの端正な文字組は別の機会にふれるとして、一番興味を持っていたのは、どの程度のクオリティのつめ組が自動で出来るのか、ということです。パンフレットやアドビサイトのpdfを読んでも、いまひとつ実体がわからないのが、InDesignの自動カーニング。革新的な「オプティカルコントロール」とあります。インストールして真っ先に行った実験がこれです。



デフォルトの文字組アキ量設定は、和文と数字欧文とのアキが大きすぎます。以下は今回(6月)の仕事用に設定したカスタム文字組アキ量設定でオプティカルカーニングを施した文字組です。個人的にはDTPでここまで出来るようになったか、と感慨深いものがあります。




InDesignのPDFをHTMLに配置する実験(笑)>>>
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